鼻やのどの不調、肩こり、頭痛などの症状があって病院に行ったけれど、検査では「異常なし」、薬を服用したが改善しなかったなど、現在も原因がハッキリせず「体調不良が続いている」方はいらっしゃいませんか?
もしかして、その不調の背景には「慢性上咽頭炎(まんせいじょういんとうえん)」が原因としてあるかもしれません。

慢性上咽頭炎は鼻・のどに関する症状だけではありません。上咽頭の炎症が「病巣」となってIgA腎症・関節炎・皮膚炎などの全身疾患や、めまいなど自律神経の乱れに伴う症状を引き起こすなど、慢性上咽頭炎は非常に多くの症状・疾患に関連しています。
慢性上咽頭炎に関連する様々な症状に期待できる治療法として、病的な上咽頭粘膜を塩化亜鉛溶液につけた綿棒でこする「Bスポット治療」があります。

検査や治療をしても長引く不調が改善しなかった方、原因不明の症状が続いている方は「治療の選択肢の一つ」として、当院までお気軽にご相談下さい。

慢性上咽頭炎とは?

慢性上咽頭炎はあまり知られていない病名ではありますが、原因不明の体調不良の背景に「慢性上咽頭炎」がある場合も少なくありません。

上咽頭の場所

​​鼻と口はのどに繋がっており、鼻に近い部分から「上咽頭・中咽頭・下咽頭」と呼ばれています。上咽頭は「鼻とのどの間(鼻の奥部分)」に位置しており、口を開けても見えない場所にあります。

上咽頭は鼻から入った「空気の通り道」としての役割のほか、リンパ球(白血球の一部)が多数存在していることで外から入ってきた細菌やウイルスに感染した細胞を排除する「免疫」としての役割も担っています。

また、上咽頭の近くにはのどの感覚・運動を司る「舌咽神経(ぜついんしんけい)」や咽頭・声帯・食道の感覚と運動を司り、血管、心臓・胃など腹部まで達する「迷走神経」などの脳神経が通っています。上咽頭の炎症がこれらの神経を刺激するため、のどだけでなく内臓などにも症状が現れます。

(図)上咽頭の位置

慢性上咽頭炎の症状

「慢性」とは病気が進行しない、もしくは極めてゆっくり進行して、2~3か月以上症状が続くことを指します。
慢性上咽頭炎によって現れる症状は様々で、発生機序(起こるしくみ)から大きく分けて3つに分類できます。

  • ①慢性上咽頭炎や炎症の放散(広がること)による症状
    主に鼻・のどを中心とした局所的な症状がみられます。
    (例)鼻とのどの間の痛み、違和感・乾燥感、鼻の奥から鼻水がのどに落ちる感じがする(後鼻漏:こうびろう)、鼻とのどの間に痰(たん)がこびりつく、頻繁に咳払いがしたくなる、声が出しにくい(特にナ行)、首こり・肩こり、頭痛、頬骨・耳の下の痛み、耳が詰まった感じがする(耳管狭窄症や耳管開放症)など
  • ②免疫システムを介した二次疾患(病巣疾患
    上咽頭の炎症を抑えるためにリンパ球などから産生された物質「サイトカイン」が血管・リンパ管を通じて腎臓・関節・皮膚に運ばれ、腎炎・関節炎・皮膚炎などを引き起こすと考えられています。
    (例)IgA腎症、ネフローゼ症候群、関節炎、胸肋鎖骨過形成症(きょうろくさこつかけいせいしょう)、掌蹠嚢疱症(しょうせきのうほうしょう)、乾癬(かんせん)、慢性湿疹、アトピー性皮膚炎など
  • ③自律神経系の乱れを介した症状
    自律神経系は上咽頭の近くにあるため、上咽頭の炎症が自律神経系の乱れを誘発していると考えられています。
    (例)全身倦怠感、めまい、睡眠障害(不眠・過眠)、起立性調節障害記憶力・集中力の低下、過敏性腸症候群、胃もたれ・胃痛などの機能性胃腸症、むずむず脚症候群、慢性疲労症候群、線維筋痛症など

慢性上咽頭炎の原因

慢性上咽頭炎の直接原因は、今のところ明らかになっていませんが、次のような要因によって上咽頭が炎症すると考えられています。

  • 細菌やウイルス感染
  • 体の冷え
  • 疲労・ストレス
  • 乾燥
  • ​口呼吸や鼻炎・副鼻腔炎などによる鼻づまり・後鼻漏
  • ​逆流性食道炎

慢性上咽頭炎の検査・診断・治療

上咽頭は目視できない場所に位置しているため、慢性上咽頭炎を調べるために内視鏡検査を行います。その後、患部をこする擦過診(さっかしん)による診断的治療*1を行います。
*1診断的治療:治療結果により病気の診断とすること。

検査(問診・視診)

自覚症状・発症期間などの問診と鼻内視鏡(ファイバースコープ)による視診を行い、上咽頭の炎症状態を確認します。
慢性上咽頭炎では一見すると赤みもなく正常な上咽頭に見えますが、よく観察するとうっ血(血液が溜まっている状態)やむくみで静脈が見えづらくなっていたり、後鼻漏による鼻水が絡んでいたりすることが確認できます。

なお、当院で使用する内視鏡は非常に細いカメラであり、鼻から行う胃カメラで使用する内視鏡に比べると、直径は約半分のサイズとなっています。挿入時に若干違和感がある場合がありますが、麻酔ゼリーなどを塗ってから行いますので、痛みの心配はありません。

(画像)当院で使用中の電子内視鏡

確定診断(擦過診)

慢性上咽頭炎が疑われる場合、鼻からまたは口の中から綿棒による「上咽頭の擦過」を行います(=Bスポット治療)。
こすって出血や痛みがみられる場合には、「慢性上咽頭炎」と確定します。

(画像引用)Bスポット治療(EAT療法)の仕方|日本病巣疾患研究会
https://jfir.jp/chronic-epipharyngitis/

Bスポット治療(上咽頭の擦過治療)

上咽頭は以前「鼻咽腔(びいんくう)」と呼ばれていたため、上咽頭の擦過治療のことを鼻咽腔(BIINKUU)の頭文字Bを取った「Bスポット治療」と呼びます。
もともとBスポット治療は60年以上前から行われていた治療法ですが、当時は医療機器の性能の限界により効果に対する裏付けが難しかったことから、あまり定着しませんでした。しかし、近年の高性能な内視鏡機器の登場によって科学的な裏付けが進み、耳鼻咽喉科医の中でも再評価され始めています。最近では「上咽頭擦過療法(EAT療法)」と呼ばれることもあります。

Bスポット治療は、塩化亜鉛溶液(0.5%~1%)を染みこませた綿棒を鼻やのどから直接上咽頭にこすりつけます。
※1回目はファイバースコープで上咽頭の状態を確認してから行います。

(画像引用)Bスポット治療(EAT療法)イメージ|日本病巣疾患研究会
https://jfir.jp/chronic-epipharyngitis/

Bスポット治療のポイントは、この「こすること」であり、上咽頭の粘膜を正常化させるために非常に大切な処置となります。
上咽頭の炎症程度により痛み・出血が生じることがありますが、炎症の改善が進むにつれて痛み・出血もなくなります。

Bスポット治療で期待できる効果

  • 抗炎症作用
    塩化亜鉛には患部を収れん(収縮)させる作用があるため、炎症を落ち着かせる効果があります。炎症が鎮静化することにより、上咽頭炎による痛みや放散による症状の改善が期待できます。
  • うっ血の改善
    通常、老廃物は血液中に排出されています。しかし、慢性上咽頭炎は上咽頭の高度なうっ血状態がみられるため、循環血中への排出機構がうまく機能していないことが推察されています。上咽頭をこすって刺激を与えて溜まった血液を体外に排出させることで、リンパの流れや静脈循環の改善に期待ができます。
  • 迷走神経の刺激反射
    迷走神経への刺激は自律神経系の機能改善に繋がることから、めまい・頭痛・頭が重く感じる、全身の倦怠感などの症状の改善に有効です。

よくある質問

Bスポット治療に副作用や安全性に問題はありますか?

Bスポット治療は、1960年代より行われていますが、これまで重篤な副作用は確認されていません。ただし、嗅覚神経に近い部分へ塩化亜鉛を塗布すると、まれですが嗅覚低下を起こした例もあるため、嗅覚神経の近くを避けて処置するようにしています。

なお、処置後の副反応として、一時的に鼻水が増える、後鼻漏などの症状が強く出たり、頭が重く感じたりする場合もありますが、通常処置後数時間~遅くとも翌日には治まりますので、心配ありません。

また、Bスポット治療では塩化亜鉛を使用しますが、治療の第一人者である堀口申作先生(東京医科歯科大学初代耳鼻科教授)や60年間で約10万回以上の施行経験のある谷俊治先生(東京学芸大名誉教授)もBスポット治療の安全性には問題ないと話されています。

Bスポット治療は痛いですか?

Bスポット治療は、こすって患部を刺激することで収れん作用により正常化を促す治療となるので、治療初期では痛みを感じる方が多いでしょう。
痛みは消毒薬を傷口に塗ったような「しみる」感覚に近く、治療初期では処置後数分~数時間に渡って痛みを感じることもありますが、次第に落ち着いてきます。
また、「痛みが強い」とは、それだけ上咽頭の炎症が強いということであり、Bスポット治療を繰り返して上咽頭の炎症が改善されていけば、次第に治療時の痛みも軽減していきます。

Bスポット治療は何歳から受けられますか?妊娠中でも受けられますか?

Bスポット治療には年齢制限はありませんが、毎回じっと座って処置を受けられる年齢でないと難しいです。そのため、当院では「中学生以上で本人も治療を理解している場合」とさせていただいております。
なお、Bスポット治療は上咽頭への局所処置となりますので、妊娠中・授乳中の方でもお受けいただけます。

Bスポット治療の治療期間や治療終了時期を教えてください。

一般的に慢性炎症の改善には少し時間がかかります。
慢性上咽頭炎に対するBスポット治療の平均的な治療期間は「10回~15回(週1回3か月~半年程度)」であり、治療終了時期の目安は「痛み・出血がみられなくなった頃」となります。

とはいえ、上咽頭炎による鼻の奥の痛み・違和感・後鼻漏や頭痛など局所的な症状では、治療時の出血が完全になくならなくても「症状がなくなれば、治療終了」として差し支えないと考えられています。
一方、腎炎・掌蹠膿疱症などの「自己免疫疾患」や、めまい・全身倦怠感・睡眠障害などの「自律神経障害」に起因した症状については、治療時の出血がみられなくなっても症状が残っていたら「症状が完全になくなるまで続ける」ことをおすすめします。迷走神経の刺激作用が期待できます。

慢性上咽頭炎を予防するポイントは何ですか?

慢性上咽頭炎は一旦症状が改善しても、自律神経の乱れ・ストレスなどによって再発することがあります。慢性上咽頭炎を予防するポイントは次の通りです。

  • のど粘膜を乾燥させない
    のど粘膜の乾燥は、細菌・ウイルスの付着要因になります。こまめな水分補給(水などノンカフェイン)と鼻呼吸を意識することが大切です。
    また、「鼻うがい」も上咽頭の乾燥を防いで、体調や自律神経を整えるセルフケアとして有効です。通常のうがいでは流せない鼻腔内の花粉・ほこりなどを洗浄液(生理食塩水*2)で洗い流して、鼻粘膜の乾燥を防ぐ効果が期待できます。ただし、水やお湯だけで鼻うがいを行うと、鼻がツーンと痛くなりますのでご注意ください。

    *2生理食塩水:水250mlに食塩小さじ1/3程度をよく溶かしたもの。洗浄粉末(生理食塩水用粉末)とボトルのセットで水・お湯を入れるだけのキットも市販されています。

    (図)鼻うがい用ボトル・洗浄粉末キット例

  • 体(特に首)を冷やさない
    体が冷えると、自律神経のバランスの乱れや免疫力の低下によって細菌・ウイルス感染を引き起こしやすくなります。特に首の後ろを冷やすと、上咽頭周辺の血流が悪くなり血液が溜まりやすくなることから、上咽頭の炎症につながります。日ごろから首の大きくあいた服を着たり、首を冷やす湿布を貼ったりするのは避けた方が良いでしょう。
    また、同時にストレスを溜めないよう、健康3原則(栄養バランスの良い食事・適度な運動・十分な睡眠)を意識して健康的にお過ごしください。

院長からのひとこと

副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎が後鼻漏の原因となることは、よくあります。副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、慢性鼻炎など鼻の疾患が原因であることも多いですが、原因がわからずに悩んでおられる方も多数いらっしゃいます。慢性上咽頭炎が原因の場合もありますので、そのような方はお気軽にご相談ください。また、分子栄養学における栄養療法の治療の一つとして、Bスポット療法をご検討・ご希望の方も、どうぞご相談ください。
(院長は臨床分子栄養医学研究会認定医です。)

 

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