滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)は、耳の鼓膜の奥にある空間「中耳」に滲出液(液体)が溜まることによって起こる「痛くない中耳炎」です。滲出液が溜まる原因は「耳の換気不良」であり、滲出性中耳炎の患者さんの多くは10歳頃までのお子さんや高齢者ですが、鼻すすり癖のある大人の方にも発症しやすい病気です。

滲出性中耳炎の主な症状は、「難聴(聞こえにくい)」「耳の閉そく感(詰まった感じ)」「耳鳴り」「自分の声が耳に響く」などです。急性中耳炎とは異なり、痛み・発熱がないため発症に気づきにくく、これらの症状は「時間と共に慣れやすい」ため、受診が遅れがちになる特徴があります。また、難聴は軽度~中等度で、お子さんが自ら症状を訴えることはほとんどありません。しかし、未就学前のお子さんでは言語発達に影響を及ぼす可能性があるため、「読んでも返事をしない」「テレビの音を大きくする」などの様子が見られたら、すみやかにご受診ください。

治療には時間がかかる場合がありますが、途中で治療を中断すると難聴が残ったり、中耳炎が慢性化して真珠腫性中耳炎・癒着性中耳炎など別の病気に移行したりする可能性があるため、根気よく最後まで治療することが大切です。

滲出性中耳炎とは?

滲出性中耳炎は、鼓膜の奥にある空間(鼓室:こしつ)に滲出液が溜まることで、聞こえが悪くなる「痛くない中耳炎」です。滲出性中耳炎の根本原因には「耳管機能の不良」があります。

耳管と聞こえの関係

私たちの耳は、「外耳(がいじ)」、「中耳(ちゅうじ)」、「内耳(ないじ)」の3つに分けられています。特に「中耳」は、聞こえを保つために重要な部分であり、外から入ってきた音(この時点では空気の振動)を増幅させ、内耳へ伝える役割を担っています。

(図)耳の構造

中耳が担う「聞こえ」の役割を支えているのが、「耳管(じかん)」と呼ばれる、耳と鼻をつなぐ細い管です。耳管は通常閉じていますが、つばを飲み込んだりあくびをしたりすると開きます。耳管は、主に3つの働きをしています。

  1. 中耳(耳の中)の換気を行い、外との気圧を同程度に調節する
  2. 粘膜から出た滲出液などの排出
  3. 鼻から細菌・ウイルスなどの病原体の防御

中耳に水が溜まる理由

耳管が正常に機能していないと中耳内の換気が行えなくなるため、耳の中の気圧が大気圧と比べて下がり(陰圧)、鼓膜が奥に引っ張られます。次第に粘膜から染み出てきた滲出液が鼓室内に溜まるようになります。

子どもの滲出性中耳炎の特徴

滲出性中耳炎は小学校に入るまでのお子さんの約90%が一度は発症する中耳疾患とされており、お子さんの難聴原因として最も多い病気です。お子さんでは3か月以内に自然治癒することが多いですが、約30%~40%は再発し、5~10%は治癒までに1年以上かかるとされ、後遺症が生じるケースもあるため、長期的に経過観察が必要な病気です。また、未就学前のお子さんが難聴になると、言語発達に影響を及ぼす恐れがあります。

子どもの滲出性中耳炎の症状

難聴(聞こえが悪い)

鼓室内に滲出液が溜まると空気の振動がうまく耳小骨に伝わらないため、聞こえが悪くなります。滲出性中耳炎での難聴の程度は、さほど強くありません。
しかし、小さなお子さんでは「聞こえの悪さ」を自分で訴えられないので、次のような様子・態度がみられることがあります。

  • しきりに耳を触る
  • 頭を振る
  • 名前を呼んでも振り向かない(反応しない)
  • テレビの音を大きくする
  • 聞き返しが多くなる

小さなお子さんの難聴は言語発達に影響を及ぼすことがあるため、上記のような様子が見られたり、健診などで指摘されたりした場合には、お早めにご相談ください。

耳の閉塞感(耳が詰まった感じ)

中耳に滲出液が溜まるため、耳に閉塞感が現れます。お子さんでは「耳がヘン」と表現することがあります。

子どもの滲出性中耳炎の発症要因

お子さんに滲出性中耳炎が多い理由には、次のような問題が存在しています。

急性中耳炎からの移行

滲出性中耳炎を発症するお子さんのうち、約半数は「急性中耳炎からの移行」です。
急性中耳炎では痛み・発熱などがみられますが、回復過程において症状が落ち着いてしまうと、耳の中の炎症は治っていなくても「治った」と判断して治療を中断してしまうケースがみられます。

耳の構造上、鼻・のどが炎症しやすい

子どもの耳管は太く・短く・耳管の角度が水平に近い構造をしているため、鼻から入った細菌・ウイルスが耳に侵入しやすい形状となります。その上、子どもは大人と比べて、免疫(抵抗力)が弱く、友達・兄弟間の身体的接触も多いため、急性中耳炎が治りきる前に再度鼻・のどの病気にかかってしまいやすいことがあります。耳管の通気が悪くなるので、滲出液が溜まって発症してしまうケースがあります。

アデノイド(咽頭扁桃)が大きい

鼻咽腔にあるアデノイドは、2歳頃から大きくなり、6~7歳頃にピークを迎え、その後10歳頃までには小さくなっていきます。
アデノイドが肥大する(大きくなる)と、近くにある耳管を圧迫するので、耳管の通気が悪くなります。さらに、通気が悪くなると細菌などの病原体が含まれる鼻水が溜まりやすくなります。

(図)子どもと大人の耳管の違い

大人の滲出性中耳炎の特徴

大人の滲出性中耳炎では、自分で「聞こえがおかしい」と気づいても、痛みがないので中耳炎とは気づかず、特に高齢の場合には「年齢のせい」と思い込みがちです。
難聴が残ったり他の病気に移行したりする可能性があるほか、稀に腫瘍が原因となり発症しているケースもあるため、早めに受診することをおすすめします。

大人の滲出性中耳炎の症状

大人の滲出性中耳炎では、主に次のような症状が現れます。

  • 聞こえが悪い(難聴)
  • 耳が詰まったように感じる(耳の閉塞感)
  • 自分の声が耳の中で響く
  • 耳鳴りがする
  • 頭が重い

いずれも強い症状ではないので、見過ごされがちです。
耳に違和感を認めた場合には、耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。

大人の滲出性中耳炎の発症要因

大人の滲出性中耳炎では、次のような要因が「耳管機能不全」を生み、発症に繋がります。

  • 加齢による耳管機能の低下
    大人の滲出性中耳炎患者さんの多くは、高齢者です。50代・60代頃から耳管の働きが低下していくことで、滲出液が溜まりやすくなり、中耳炎の発症に繋がります。
  • 上咽頭腫瘍
    稀ですが、大人の滲出性中耳炎では、鼻の奥の「上咽頭」にできた腫瘍が原因となることがあります。耳管の入り口は上咽頭にあるため、腫瘍によって耳管が塞がってしまうと、滲出液の貯留に繋がります。

そのほか、以下のような要因もみられます。

  • 一時的な免疫力の低下
    大人の耳は、子どもと比べ、鼻からの細菌・ウイルスが中耳に侵入しづらい構造となっていますが、風邪を引いたりストレスがかかっていたりすると、免疫力の低下に繋がり、耳管の機能不全に陥ることがあります。
  • 鼻をすする癖がある
    「鼻をすする」という行為は、耳管を通じて、中耳腔の空気が吸い取られ、中耳の空気圧を下げてしまいます。日頃から鼻をすする癖があると、中耳腔の陰圧が続いて鼓膜が凹み、滲出液が溜まっていきます。
  • アデノイド(咽頭扁桃)が大きい
    耳管の近くにあるアデノイドは、一般的に6~7歳頃をピークに思春期前までに自然消失していきますが、成人してもアデノイドが大きいままの場合があります。(極端に大きい場合は「アデノイド増殖症」という病気となります)
    大きくなったアデノイドが耳管を圧迫することで、耳管の機能不全が起こり、滲出液が溜まりやすくなります。

注意したい慢性中耳炎

滲出性中耳炎を放置すると、中耳の炎症が持続して「慢性中耳炎」となります。
慢性中耳炎は痛みがないことが多く、受診が遅れやすい傾向がありますが、重症化により重篤な症状を引き起こしたり、治療に外科的手術が必要になったりするため、早期治療開始が望まれます。
慢性中耳炎のうち、特に注意したい病気は次の通りです。

  • 真珠腫性中耳炎(しんじゅしゅせいちゅうじえん)
    鼓膜の一部が中耳に陥没して入り込んで袋状になり、そこに固くなった耳垢や皮膚が溜まって「塊(真珠腫)」を形成して、周囲の骨・組織などを破壊しながら増大していく病気です。真珠腫は腫瘍ではなく、塊が真珠のように見えることから名づけられています。耳の奥には大切な神経がたくさんあるため、真珠腫性中耳炎はすぐに治療したい病気です。真珠腫性中耳炎には「先天性(生まれつき)」と「後天性」がありますが、ほとんどは後天性で、「中耳の換気不全」が主な原因となり発症しています。主な症状は、「膿まじりのくさい耳だれ(血が混じることもある)」「聞こえの低下(難聴)」「耳の痛み」です。悪化すると、「めまい」「味覚障害」「顔の動きが悪くなる(顔面麻痺)」が現れたり、髄膜炎・脳炎など命に関わる病気を合併したりすることもあります。治療は全身麻酔による手術が一般的ですが、手術をしても再発しやすい傾向があります。なお、早期であれば外来で真珠腫除去が可能なケースがあります。
  • 癒着性中耳炎(ゆちゃくせいちゅうじえん)
    耳管の換気不良が続くことで、中耳の内外で気圧の差が生じ、鼓膜が凹んで中耳腔の壁に癒着してしまう(くっつく)病気です。主な症状は「聞こえの悪さ(難聴)」「耳だれ」であり、稀に「耳鳴り」「めまい」などの症状を伴うことがあります。癒着具合が軽度であれば、耳管に空気を送り込む「耳管通気」と共に症状の改善のための薬物療法や中耳内の洗浄を行います。癒着した鼓膜は再癒着しやすいため、重症例では手術による鼓室全体の再建が必要となります。
  • コレステリン肉芽腫
    中耳の換気不全が発症の背景にある難治性中耳炎です。換気不全により中耳の粘膜がむくんで充血して、鼓室内に血液成分を含んだ多量の滲出液が溜まります。滲出液への異物反応で形成されるのが「コレステリン肉芽腫」です。10歳以降に発症し、片耳だけ「聞こえが悪い(難聴)」「耳の閉そく感(詰まった感じ)」「耳だれ」が現れます。主な治療法は換気のための「鼓膜チューブ挿入」となり、チューブからの滲出液の排出による「耳だれ」が続く場合があるので、症状軽減に耳洗浄や薬物療法を併用するケースがあります。症状が軽減しないケースには、外科的手術を行うことがあります。ただし、今のところ決定的な治療法は確立されていないため、手術をしても再発する可能性があります。

滲出性中耳炎の診断・検査は?

滲出性中耳炎の検査

  • 問診・視診
     鼓膜の状態を電子スコープ・内視鏡カメラで、詳しく確認します。
     電子スコープ・内視鏡カメラでの検査に痛みはなく、くすぐったい感じがして、数秒で終わります。
     なお、大人の場合には、上咽頭腫瘍が原因となることがあるので、ファイバースコープで確認します。
  • 鼓膜の動きの検査(ティンパノメトリー検査)
     鼓膜に圧を加えて鼓膜の動きを調べる検査です。中耳に水が溜まっているかどうかが分かります。片側数十秒くらいで終了する簡単な検査です。
  • 耳管機能検査
    耳管が正常に働いているかどうか調べる検査です。スピーカーを鼻の穴へ、耳栓(プローブ)を耳の穴に入れて、唾(つば)を飲み込み、スピーカーの音が耳で拾えるかを確認します。片側数十秒くらいで終了する簡単な検査です。
  • 聴力検査
     どのくらい小さい音まで聞こえるかを調べます。滲出性中耳炎では、一般的に難聴の程度は軽症~中等度です。

滲出性中耳炎の診断

診療ガイドラインによると、滲出性中耳炎は「鼓膜に穿孔がなく、中耳腔に貯留液をもたらし難聴の原因となるが、急性炎症症状すなわち耳痛や発熱のない中耳炎」と定義されています*1。

*1(参考)小児滲出性中耳炎診療ガイドライン2015 P.13|日本耳科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会
https://www.otology.gr.jp/common/pdf/guideline_otitis2015.pdf
当院もガイドラインに則り、診断しています。

滲出性中耳炎の治療

滲出性中耳炎の治療では、中耳腔から滲出液を排出することが大事です。

保存的治療

経過観察

お子さんの滲出性中耳炎では、急性中耳炎からの移行も多くみられますが、そのうち75%~90%程度は発症3か月以内に自然治癒すると報告されています。そのため、中等度以上の難聴や鼓膜の病的変化がない場合には、発症から3か月間は経過観察が推奨されています。とはいえ、その間何もせずに観察だけするのではなく、必要な検査をしながら、炎症や感染に対する治療を行います。

鼻・のどの治療(薬物療法)

副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎・急性中耳炎・アデノイドの炎症など鼻・のどの病気は滲出性中耳炎を悪化させる要因となるため、薬物療法やネブライザー治療(鼻から霧状の薬液を吸入する治療)、鼻水の吸引などを行います。
よく使われるお薬には、次のようなものがあります。

  • 粘液溶解薬
    中耳に溜まっている液体(滲出液)を出しやすくするお薬です。
  • 抗菌剤(抗生物質)
    副鼻腔炎など鼻の周辺器官に感染を伴う場合には、マクロライド療法(少量長期投与療法)を行うことがあります。

耳管通気

耳管に空気を送り、陰圧状態を改善する治療法を行います。

【子ども】鼻で風船を膨らませる方法「オトヴェント」やゴム球を片鼻の先に挿入して、空気を送る「ポリッツェル法」などがあります。いずれの方法も痛みはほとんどありません。
【大人】片方の鼻から「耳管カテーテル(細い管)」を挿入し、耳管の入り口に当てて空気を送り込みます。力を入れてしまうと、痛みを感じやすいので、力を抜いてください。

漢方療法

当院では、滲出性中耳炎治療の選択肢のひとつとして「漢方治療」を行っています。
滲出性中耳炎に対しては、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)・柴苓湯(さいれいとう)などを処方しています。処方する漢方薬は厚生労働省から認可されている医療用漢方製剤なので、健康保険が適用されます。ご興味がございましたら、お気軽にご相談ください。

鼓膜切開

鼓膜切開は、鼓膜に切開用メスやレーザーで穴をあけて、溜まっている滲出液を出す処置です。診療ガイドラインに則り、高度な難聴がみられる場合、他の保存的治療を行っても改善が認められない場合、診断・治療方針の決定のために必要な場合には、ご本人(もしくは親御さん)にご説明の上、実施します。
痛みに配慮して、耳に麻酔液を入れてから切開します。鼓膜は再生が速い部位なので、切開しても1週間程度で穴は自然に塞がります。

鼓膜切開のメリットは次の通りです。

  • 中耳の換気が行われるようになって、鼓膜状態が軽快していく
  • 難聴症状の改善に即効性がある
  • 滲出液から原因菌を見つけ、適切な抗生物質を選定できる

鼓膜チューブ留置術

薬物療法や耳管通気などの保存的治療をしても、耳管の機能不全が起こり、滲出性中耳炎を繰り返してしまう場合には、鼓膜に数ミリのチューブを入れて置く「鼓膜チューブ留置術」を検討します。チューブによって中耳の換気がスムーズに行えるようになるため、溜まっている滲出液の排出がしやすく、炎症を抑える効果が期待できます。
通常、局所麻酔をして外来にて行える小手術であり、留置したチューブは2年を目安とし、クリニックで取り外します。なお、鼓膜に開いていた穴は自然に閉じます。

(図)鼓膜チューブ留置術イメージ

アデノイド切除術

鼓膜換気チューブ留置術だけでは効果が不十分であり、アデノイド増殖症がある場合には、アデノイド切除術を行うことがあります。通常、入院して全身麻酔をかけて行います。
※手術が必要と思われる場合は、基幹病院にご紹介させていただきます。

滲出性中耳炎の予防

滲出性中耳炎を予防するためには、次のようなポイントに注意すると良いでしょう。

  • 急性中耳炎は最後までしっかり治療する
    お子さんの滲出性中耳炎の多くは、急性中耳炎からの移行です。そのため、急性中耳炎による痛み・発熱などの症状が治まっても、耳の中の炎症が完全に治るまでしっかり治療することが必要です。
  • 鼻の病気を放置しない
    風邪・アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎など鼻の炎症が続くと、滲出性中耳炎の発症リスクを高めます。そのため、鼻水が出たらきちんと鼻をかむ、うまくかめないお子さんでは吸引器で鼻水を取り除くなど対応をしましょう。また、症状が長引く場合には、医療機関を受診して、原因を突き止め、きちんと治療することが大切です。当院では鼻吸引の処置も行っています。お気軽にご来院ください。
  • 集団保育・家族の喫煙などが発症・悪化リスクとなる
    集団保育・喫煙(家族の場合も)などの生活環境が、滲出性中耳炎の発症・悪化リスクを高めることがあります。また、治りにくくする要因でもあるので、注意が必要です。

よくあるご質問

滲出性中耳炎になりやすい人の特徴を教えてください。

滲出性中耳炎になりやすいタイプは、次の通りです。

  • 子ども
    • 兄弟姉妹がいる
    • 両親が喫煙している(受動喫煙)
    • 保育園や幼稚園など集団保育を受けている
    • 風邪を引きやすい
    • 大きないびきをかいているなど、アデノイド肥大が疑われる
  • 副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎など鼻疾患がある
  • 口蓋裂やダウン症である
    耳管機能不全の傾向があるため、滲出性中耳炎になりやすく治りにくいことが知られています。
  • 鼻をすする癖がある
  • 高齢者

年齢・家族構成以外の対処できる要因については、できるだけ対処されるとよいでしょう。特に親御さんが喫煙者で、滲出性中耳炎を繰り返すお子さんをお持ちであれば、この機会に禁煙することをおすすめします。

鼓膜換気チューブを入れた後、注意することはありますか?

個人差はありますが、一般的に鼓膜換気チューブは1年~2年くらい耳の中に入れておきます。その間、お風呂・プールなど気になるかと思いますが、日本の水道水は衛生状態が良いので、入浴・洗髪など日常生活で耳に少し水が入る程度は問題なく、プールも水遊び~普通の水泳であれば、そのまま入っていただいて大丈夫です。ただし、水泳により「耳だれが出る」「耳の違和感がある」場合には、耳栓を使用することをおすすめします。なお、感染の機会が高まるため、潜水や飛び込み、川・海での水泳は控えてください。

滲出性中耳炎での通院頻度を教えてください

滲出性中耳炎の治療では、鼻や耳の状況を観察するため、定期的に通院いただいていますが、通院頻度は週1~月1回と患者さんの状況によって個人差があります。一般的に、小さなお子さんでは中耳炎を繰り返し発症しやすいため、通院期間が長期に渡ってしまうことがよくあります。そもそも中耳炎とは、鼻の状態が良くなって、しばらく経ってから耳の状態が改善していくという経過を辿ります。中耳の炎症がきちんと治る前に治療をやめてしまうと、再発したり別の耳の病気に移行したりすることがあるため、根気よく治療を受けましょう。

院長からひとこと

お子さんの場合、鼻風邪が長引いた時などに滲出性中耳炎に罹患して、鼓室に水が溜まることがあります。特にお子さんが小さいうちは、「耳が変」「聞こえが変」などと違和感を伝えるのが難しいため、保護者の方が気づかないうちに悪化している場合もあり、注意が必要です。
耳が聞こえにくい時期が長く続くと、言葉の習得に影響が出る場合もあります。
治るのに少し時間がかかることが多い病気ですが、薬や鼓膜切開などで治癒することも多いため、鼻風邪が続いている場合は一度、耳鼻科を受診してみてください。
また、大人の場合は片耳または両耳が聞こえないと、音や自分の声がこもって聞こえたり、耳鳴りが止まらなかったり、不快な気分になったりします。耳閉感が続く場合は、いつでもご相談ください。

記事執筆者

木戸みみ・はな・のどクリニック
院長 木戸 茉莉子

  • 耳鼻咽喉科専門医
  • 補聴器相談医
  • 身体障害者福祉法指定医