耳鼻咽喉科では、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)のうち、聴覚、味覚、嗅覚を扱います。
今日はその中でも匂い〜嗅覚に関するお話です。
美味しい料理や甘いお菓子の香り、水々しいフルーツの香り、綺麗な花の香り。
生ゴミの臭い、腐った物の臭い、ガスや危険物質の臭い。
そもそも日本語では、心地よい匂いのことを「香り」、不快な匂いは「臭い」と分けているようです。
匂いを感じ取る感覚のことを「嗅覚」といいます。
☆嗅覚は一体何のために発達したのでしょうか?
嗅覚はまず、自分の身を守る役割があります。
腐った食べ物、物が燃える時の煙、ガス漏れなどの異常事態を匂いによっていち早く察知することができます。
また食事の匂いを嗅ぐことによって食欲が増進します。
動物は人間よりも嗅細胞が多く、嗅覚が優れているため、餌を見つけたり、自分のなわばりを決めたり守るためにも、匂いを利用します。
その他、人間にとっては生活に潤いを与えるものとして、匂いが利用されています。
また良い香りによって癒されるアロマテラピーなども、その良い例です。
匂いは、脳を刺激して、人の記憶や情動にも働きかけます。
ふとした匂いに、小さい頃の懐かしい思い出が蘇るなどの体験はありませんか?
最先端の研究では、嗅覚障害とアルツハイマー型認知症の関係が指摘されています。
☆匂いを感じる仕組みとは?
鼻腔の天井の部分に嗅粘膜と呼ばれる切手1枚分ほどの部分があります。
そこに匂いを知覚するための嗅神経細胞が1000万個ほど存在します。
鼻の中に入ってきた匂い物質が鼻内の粘液に包まって嗅覚受容体にくっつきます。
そこから匂い物質の情報が電気信号として嗅神経を介して嗅球に伝わり、匂いを知覚します。
さらに大脳にこの情報が伝わると、匂いの識別が行われます。
そのため、鼻づまりの時は鼻粘膜が腫れているため、匂い情報が嗅粘膜に届きません。
匂いの情報が脳に伝わらない=匂いがわからないというメカニズムになっています。
なにげなく嗅いでいたいろんな匂いですが、実はこんなメカニズムで脳に認識されています。