喉(のど)は、呼吸をする・飲み込む(嚥下:えんげ)・声を出す(発声)のほか、口から入ってきたウイルスや細菌の侵入を防ぐといった重要な働きを担っています。

喉が空気と食べ物の2つの通り道として、きちんと役割を果たすことができるのは、首のほぼ中央に位置する「喉頭(こうとう)」のお陰です。
喉頭は気管の入り口にあり、外からは甲状軟骨である喉仏(のどぼとけ)として触ることができ、喉頭蓋(こうとうがい=喉頭のふた)、声帯(せいたい)などを含みます。

喉頭蓋や声帯は呼吸するときに開き、食べ物を飲み込むときには閉じて、食物が喉頭・気管へ入らないよう防ぐ役目を持っています。発声のときには、左右の声帯が閉じて、吐く息によって振動し、声が出る仕組みになっています。

咽頭を上から見た図

(画像)喉頭の構造|一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会

 

喉に関連する病気には、次のようなものがあります。

  • 喉が痛い……喉頭炎、喉頭蓋炎など
  • 咳が続く……喉頭炎など
  • 声がかれる、声を出しにくい……喉頭炎、声帯ポリープ、ポリープ様声帯、声帯結節、喉頭がんなど
  • 息苦しい……声帯炎、喉頭蓋炎、喉頭がんなど
  • 喉の違和感……喉頭炎、喉頭がん、咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうしょう)

喉の症状でお困りの方は、お気軽に当院までご相談ください。
特に、物が飲み込みづらい、呼吸しづらいなどの症状があるときには、早めに耳鼻咽喉科をご受診いただくと良いでしょう。

喉頭炎

喉仏あたりにある、喉頭が炎症を起こしている状態の総称です。
ウイルス・細菌感染、アレルギー、喫煙などが主な原因となり、喉の痛み、声がかすれる・出しにくい症状のほか、咳が続く、痰が出る、発熱などの症状もみられることがあります。
治療は抗炎症薬・抗生剤・ネブライザー治療(霧状の薬剤を鼻・口から吸いこむ治療)などの薬物療法を行います。
また、できるだけ声を使わず、唐辛子などの刺激物を避け、十分な睡眠と栄養補給および室内を適度に加湿して、喉の乾燥を防ぎ、喉と身体の安静を図りましょう。喫煙をされている方は、喉頭の炎症を広げないためにも、禁煙することが望ましいです

喉頭炎について詳しく見る

喉頭蓋炎

喉頭蓋にウイルス感染などが起こって喉頭蓋が腫れてしまうと、「喉頭蓋炎」になります。
喉頭蓋炎は進行して腫れが強くなると、空気の通り道を塞いでしまうため、窒息する恐れがあります。
症状は「喉頭炎」とほとんど同じですが、喉の強い痛み・息苦しい・物が飲み込みづらいなどの症状が出てきたら、喉頭蓋炎の疑いがあるため、速やかに耳鼻咽喉科を受診してください。
治療は抗菌剤やステロイド剤の点滴を行いますが、喉頭蓋炎は軽症でも数時間で進行することがあり、窒息リスクが高い場合には気管切開*1を行うこともあります。喉頭蓋炎が改善すれば、首に開けた穴を塞ぐことが可能です。
*1気管切開:首の皮膚から気管に直接穴をあけ、空気の通り道を確保する方法
※必要に応じて、対応病院を速やかにご紹介します。

声帯ポリープ

「声帯ポリープ」は、声帯の粘膜に球状の腫瘤(ポリープ)ができることで、声帯の片方にできることが多く、声の酷使、喫煙、声帯の急性炎症が主な原因となります。
声帯ポリープができると、声がかれる・声がかすれる、声を出しにくいなどの症状が現れます。できる限り声帯を休めつつ、同時にネブライザー治療や消炎鎮痛剤・ステロイド剤などの薬物療法で炎症を抑えます。
声を出す必要のあるお仕事をされている方など、声のかすれなどの症状をなくすためには、全身麻酔をした顕微鏡下による摘出手術が必要となることがあります。

また、両側の声帯がむくみ、水ぶくれのような状態が広範囲に及ぶと、「ポリープ様声帯」として粗造性嗄声(そぞうせいさせい:ガラガラ声)が現れます。
ヘビースモーカーの方、よく飲酒される方、大きな声を出す機会が多い方になりやすい病気です。治療は、大声を控えた上で禁煙や発声訓練を行い、炎症を抑える薬などの薬物療法となります。症状が改善しないときには、手術療法が検討されます。
※必要に応じて、手術に対応している病院をご紹介します。

声帯結節

声帯結節は、ペンダコのような硬い組織(結節)が声帯にできます。結節は声帯の両側にできることが多く、声の酷使が主な原因となります。声がかれる・かすれる、長時間話していると声が出しにくくなるなどの症状が現れ、喉の痛みを感じることもあります。
声帯結節は、歌手・教師・バスガイド・保育士の方、趣味でカラオケによく行かれる方などに多い病気です。
治療は、声を使い過ぎないよう喉の安静、喉に負担をかけない発声法の訓練などを行いつつ、ネブライザー治療など炎症を抑える薬物療法を中心に行います。改善しないときには手術を検討することもありますが、手術で取った場合でも喉に負担をかけるような発声をしていると、再発しやすいので注意が必要です。
※必要に応じて、手術に対応している病院をご紹介します。

また、お子さんでも運動クラブなどで大声を出し続けることなどによって、「学童(小児)結節」が起こることもあります。
お子さんの場合、声変わりとともに結節は消失することも多く、治療は日常生活に支障を来すことがなければ、喉の安静などを図りつつ、保存療法による経過観察を行います。
※必要に応じて、対応病院をご紹介します。

喉頭がん

喉頭にできる悪性腫瘍、がんです。
発症には喫煙・飲酒が影響し、男性に多く見られます。
風邪を引いていないのに、何週間も声がかすれる、喉の違和感など、声や喉の異常が続く場合には、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
※必要に応じて、対応病院をご紹介します。

声門がん

喉頭がんの中ではよくみられるがんで、声帯にできます。
初期の段階から、声がかれる症状がみられるため、比較的気付きやすいがんです。進行すると、息苦しさの症状が見られます。放射線治療で治癒することも多いがんです。

声門上がん

声帯の上の方に発生するがんです。
声がれの症状はあまりなく、喉のいがらっぽさや異物感、違和感などの症状がみられます。
首のリンパ節への転移で気づくことも多いがんです。
治療は放射線、抗がん剤、手術を組み合わせて行います。

咽頭がん

(画像)喉頭がん|一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会

 

咽喉頭異常感症

喉に何かひっかかる感じ、何かできている感じ、喉のイガイガ・ザラザラ感といった喉に異常を感じる病気には、咽喉頭炎、食道・下咽頭の悪性腫瘍、甲状腺・脳神経の病気などがあります。しかし、内視鏡(ファイバースコープ)など十分な検査を行っても、原因となる病気が見当たらない場合には、「咽喉頭異常感症」と呼びます。

咽喉頭異常感症の発症要因には、神経過敏、過度なストレス、うつなど心因的な問題、更年期障害、逆流性食道炎など様々あります。問診・視診・触診など検査から疑われる原因を絞り、治療に対する反応から診断を詰めていく、治療的診断を行います。

院長からひとこと

喉の病気は、発声や飲食、呼吸に影響が及ぶことが多いです。
放っておくと進行する病気もありますので、小さなことでも気になったら
早めに受診して相談してみましょう。

記事執筆者

木戸みみ・はな・のどクリニック
院長 木戸 茉莉子

  • 耳鼻咽喉科専門医
  • 補聴器相談医
  • 身体障害者福祉法指定医
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