嗅覚について〜老化との関係

 前回は、匂いの分子が嗅上皮にある嗅細胞にくっついて、そこから匂いの分子の情報が電気信号として嗅球に伝えられて、匂いが知覚されるというお話しでした。

 匂いの情報は嗅球からさらに脳の梨状皮質や扁桃体や海馬のある大脳辺縁系を経て、最終的に眼窩前頭皮質というところで知覚されます。さて、嗅覚は老化とともに低下しやすい感覚です。

 男性では60代、女性では70代から少しずつ低下していくことがわかっています。ただそのことを自覚されている60代以上は少ないとのことです。日本では金沢医科大学が行った調査で、石川県金沢市近郊の60歳以上の60人に調査を行ったところ、約6割の人に嗅覚低下が見られたそうです。しかし、7割の人は自分の嗅覚が落ちていないと思っていました。日常生活の中であまり匂いを意識することが少ないため、嗅覚低下に気づかないことが多い、また匂いには順応性があり、一瞬臭い!と思ってもしばらくすると慣れて感じなくなるからだと言われています。

 嗅覚は、男性の方が女性より低下しやすいですが、ただ筋力低下、骨格筋低下を伴うと女性の方がより嗅覚低下をきたしやすいことが金沢医科大学と味の素(株)の共同調査でわかっています。

 年取っても心身健やかで体の様々な機能を維持するためには、やはり適度な運動が必要なのだと思います。

 嗅覚障害は、アルツハイマー型認知症やその前段階の軽度認知障害(MCI)の初期症状にも含まれます。アルツハイマー型認知症は、アミロイドβタンパクとタウという物質が脳に蓄積し、脳の神経細胞が破壊されて脳が萎縮し、認知機能が徐々に低下していきます。脳の萎縮は大脳辺縁系から始まりますが、ここには短期記憶を司る海馬が含まれています。海馬は嗅細胞神経とも繋がっており、海馬の萎縮は嗅球にも影響をもたらすために嗅覚障害が出現しやすいと考えられています。

 2007年の海外の研究によると、嗅覚が平均以下に落ちている高齢者は、嗅覚が平均以上の高齢者と比べて50%以上アルツハイマー型認知症の前駆状態である軽度認知障害(MCI)の発症率が約50%も高くなるそうです。その場合嗅覚低下は、まず匂いはするけどなんの匂いかわからない→匂いがしなくなるというように進んでいくそうです。

 レビー小体型認知症、認知症を伴うパーキンソン病においても、早期から嗅覚障害をきたしやすいです。

 レビー小体といわれるタンパク質が脳幹に現れた場合はパーキンソン病ですが、それが大脳皮質にも沈着してくるとレビー小体型認知症と診断されます。レビー小体型認知症の場合、レビー小体が嗅球にも沈着してくるため、早期から嗅覚障害が生じるといわれています。パーキンソン病についても同じことがいえます。手足が震える、歩幅が小さくなるなどの運動症状が出る何年も前から嗅覚障害が出現する率が高いです。

 嗅覚が落ちてくると、このように認知症の始まりのサインとも考えられます。

 「最近、匂いが感じにくくなっているな?」と思われたら、いつでもお気軽にご相談ください。

 

   

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