私たちの鼻の中は、鼻腔(びくう)と副鼻腔から構成されています。
鼻腔
鼻腔の中はトンネル状になっており、鼻腔の中央には鼻中隔(びちゅうかく)と呼ばれる、左右の鼻腔を仕切る壁があります。左右それぞれの側壁からは3つの凸凹した骨(鼻甲介:びこうかい)が外から中に向かって張り出しています。下鼻甲介が一番大きいです。
副鼻腔
鼻腔の周りにある空洞です。
副鼻腔は細い孔(あな)で鼻腔とつながっていて、鼻呼吸をするたびに空気の交換を行っています。
(画像)鼻の構造|一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
また、鼻には「嗅覚(においを嗅ぐ)」だけでなく、「呼吸器官」として肺や気管を守るためのフィルターのような働きもしています。
耳鼻咽喉科では、次のような鼻の症状や病気を取り扱っています。
- くしゃみ……風邪、アレルギー性鼻炎(花粉症も含む)、血管運動性鼻炎など
- 透明のサラサラした鼻水が出る……アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎など
- 白~黄色い鼻水が出る……副鼻腔炎(蓄膿症)など
- 鼻づまり……副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎など
- 鼻がかゆい・ムズムズする……アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎など
- においが分からない……嗅覚障害、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎など
- 鼻や頬が痛い……慢性副鼻腔炎(蓄膿症)、鼻前庭湿疹など
- 鼻血がでる……鼻出血など
- いびき……副鼻腔炎、鼻中隔弯曲症など
気になる鼻症状が現れましたら、お気軽に当院までご相談ください。
アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)
アレルギー性鼻炎は、花粉やダニ(ハウスダスト)などのアレルゲン(抗原)が鼻から体内に入ると、身体が異物を体外に排出しようとする抗原抗体反応(アレルギー反応)です。
主に、透明なサラサラした鼻水、くしゃみ、鼻づまりといった鼻炎症状が現れます。
アレルギー性鼻炎には、一年中症状が出る「通年性」と花粉症のように特定の季節だけ症状が出る「季節性」があります。
アレルギー性鼻炎は、自覚症状や他覚所見からの総合判断によって診断しますが、鼻炎を引き起こしている原因(アレルゲン)を調べるには、「血液検査」が必要となります。
基本治療は「薬物療法」となり、抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、ステロイド剤などの内服薬や点鼻薬で出ている症状を抑え、特に鼻づまりが強いときには、「レーザー治療」も併用することがあります。
また、アレルゲンがスギまたはダニと確定している場合には、唯一の根治治療として注目されている「舌下免疫療法」を当院で行うことも可能です。
3~5年間毎日1回、自宅でアレルゲンエキスを服用することで、アレルギー反応を起こしにくい体質に変えることが期待できる治療です。お子さんでも治療可能ですので、ご興味ある方はお気軽にご相談ください。
通年性アレルギー性鼻炎
ダニ(ハウスダスト)が原因で、一年中アレルギー症状が現れます。
ハウスダストやダニ以外にもペット(犬、猫、ウサギ、ハムスターなど)の毛、昆虫の死骸やフン、真菌(カビ)なども、アレルゲンに含まれます。通年性アレルギー性鼻炎がある方は、気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎を合併することがあります。
花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)
「花粉症」は、医学的には「季節性アレルギー性鼻炎」と呼ばれ、植物の花粉が飛ぶ時期だけに症状が現れる特徴があります。
花粉症では、鼻炎症状以外にも目の症状(アレルギー性結膜炎)・のどの炎症も一緒に現れることがあります。
花粉症の原因となるアレルゲンは、春のスギ、ヒノキ以外にもカバノキ科(シラカンバ、ハンノキ)、イネ科雑草(カモガヤなど)、秋のブタクサ、ヨモギなど、日本国内だけでも約60種類の花粉症が確認されています。
副鼻腔炎(蓄膿症)
副鼻腔炎は、これまで「蓄膿症(ちくのうしょう)」と呼ばれていました。
風邪の後に起こりやすく、副鼻腔の細菌感染が原因となって、炎症が起きる病気ですが、アレルギー性鼻炎が長く続くと、それが原因となって起こる場合もあります。
基本治療は、マクロライド系抗菌剤・去痰剤などの服用のほか、鼻の中を洗って膿を出す「鼻洗浄」、ネブライザー治療(薬を霧状にして患部へ直接届け、炎症を改善する治療)などを行います。
炎症が慢性化すると、治療にも時間がかかってしまうので、風邪の後なかなか鼻やのどがすっきりしないときには、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう
急性副鼻腔炎
発症から4週間以内の急性期では、鼻づまりや濁った粘性の白~黄色い鼻水など、風邪の鼻炎症状と似た症状が現れるので、発症に気付きにくいケースもあります。ほかにも、鼻や頬周辺・額の痛み(頭痛と感じることも)、発熱、顔・まぶたの腫れ、嗅覚障害(においが分からない)、鼻水・痰がのどに落ちてくる、鼻づまりによっていびきをかくなどの症状もみられます。
慢性副鼻腔炎
症状が3か月以上続く場合、「慢性副鼻腔炎」の可能性があります。
中耳炎や慢性咽頭炎・慢性気管支炎を合併したり、鼻の中に鼻茸(鼻のポリープ)ができたりすることもあります。大きい鼻茸には、内視鏡手術が必要です。
※手術が必要となる場合には、対応病院をご紹介します。
好酸球性副鼻腔炎
近年増加している難治性の副鼻腔炎で、鼻の中に沢山の鼻茸ができ、手術で除去しても、再発しやすい特徴があります。難聴や喉の痛みを伴うこともあります。はっきりした原因は不明ですが、気管支喘息やアスピリン不耐症の方に多くみられます。
抗生物質やステロイドの内服(3か月を目途)を基本治療としますが、生活に支障を来すほどの鼻茸ができてしまったときには、内視鏡手術を行います。
※手術が必要となる場合には、対応病院をご紹介します。
嗅覚障害(きゅうかくしょうがい)
風邪、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、鼻中隔弯曲症、脳挫傷(脳の打撲)などの病気が原因となって、においを感じ取りにくい、または全く感じとれなくなります。
薬物療法や手術、鼻の処置などで原因となっている病気を治療することで嗅覚改善が期待できますが、風邪ウイルスなどによって、においを感じ取る「嗅細胞(きゅうさいぼう)」自体が破壊されてしまうと、嗅覚が元に戻らない可能性もあるので、注意が必要です。
嗅覚は、発症後6か月以内の治療開始が回復の鍵となりますので、においを感じなくなったら、早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。